教育・子育て

『宇宙兄弟』完結|子どもたちに読んでほしい5つの理由

漫画『宇宙兄弟』が、約18年にわたる連載を終え、全46巻で完結しました。

連載開始から作品を追い続けてきた方にとっては、大きな節目だと思います。しかし私は、完結が近づいてから本格的に『宇宙兄弟』と出会った、かなり遅い読者です。

以前から気になっていたものの、しっかり見る機会がないまま時間が過ぎ、最近になってNetflixでアニメを見始めました。すると、ほぼ一気に最後まで見てしまうほど引き込まれました。

アニメの続きが知りたくなり、漫画の全巻セットも購入。現在は、物語の先を少しずつ読み進めています。

私はロボットプログラミング教室で、日々子どもたちと接しています。生徒たちに『宇宙兄弟』を知っているか聞いてみると、ほとんどの子が知りませんでした。

宇宙やロボットに興味を持つ子どもたちなら、当然知っていると思っていたため、これは意外でした。

『宇宙兄弟』は、単に宇宙飛行士を目指す兄弟の物語ではありません。夢、失敗、仲間、問題解決、他者への信頼など、これからを生きる子どもたちに伝えたいことが数多く描かれています。

今回は、ロボット教育に携わる立場から、子どもたちに『宇宙兄弟』を読んでほしい5つの理由を考えます。

1.夢は途中から目指してもいいと教えてくれる

主人公の南波六太は、大人になってから、もう一度宇宙飛行士という夢に向き合います。

子どもたちは、学校などで「将来の夢」を聞かれる機会が少なくありません。早くから目標を持つことは素晴らしいことですが、その時点で明確な答えがなくてもよいと思います。

一度諦めた夢を拾い直してもいい。遠回りをしてもいい。大人になってから新しい目標を持ってもいい。

六太の挑戦は、人生は最初に選んだ一本の道だけで決まるわけではないことを教えてくれます。

2.本気の失敗には価値があると伝えてくれる

『宇宙兄弟』には、失敗や挫折が繰り返し登場します。

登場人物たちは、努力すれば必ず思いどおりになる世界を生きているわけではありません。能力があっても選ばれないことがあり、準備していても予想外の問題が起こります。

それでも、失敗した理由を考え、仲間に支えられ、次の挑戦へつなげていきます。

これは、私がロボット教育で大切にしていることと同じです。

ロボットが動かなかった。競技で結果を出せなかった。考えた機構が使えなかった。こうした経験は、その瞬間だけを見れば失敗です。

しかし、自分で原因を考え、試し、修正した経験は、次の問題に向き合う力になります。

価値があるのは、ただ失敗することではなく、本気で挑戦した失敗を次の一歩へつなげることです。

3.一人の天才より、違う力を持つ仲間が強いと分かる

宇宙開発は、一人の力だけでは成し遂げられません。

宇宙飛行士だけでなく、技術者、医師、管制官、訓練担当者など、多くの人が専門性を持ち寄り、一つのミッションを支えています。

『宇宙兄弟』の登場人物たちも、全員が同じように優秀なのではありません。

慎重に考えられる人、思い切って行動できる人、機械に強い人、人の小さな変化に気づける人、苦しい状況でも場を明るくできる人。それぞれに異なる長所と弱さがあります。

ロボット競技も同じです。プログラムが得意な子、機体づくりが得意な子、発想に優れた子、最後まで粘れる子が協力することで、一人では届かない結果を生み出せます。

自分にない能力を羨むだけではなく、他者の得意を認め、一緒に取り組む力を子どもたちに身につけてほしいと思います。

4.正解のない問題と向き合う姿が描かれている

『宇宙兄弟』では、最初から正解が用意された問題だけを解くわけではありません。

限られた情報から状況を判断し、仲間と話し合い、試しながら解決策を見つけていきます。判断が常に正しいとは限らず、迷いや葛藤も描かれます。

私は教室で、子どもから「どうすればいいですか」と聞かれても、できる限りすぐに答えを教えません。

「どこまでは分かっている?」「何を変えてから動かなくなった?」「次に何を試せそう?」と問いかけ、子どもが自分で考え始められるよう支えます。

これから必要になるのは、用意された正解を覚える力だけではありません。何が問題なのかを見つけ、試行錯誤しながら答えをつくる力です。

『宇宙兄弟』は、その問題解決の過程を、人間らしい迷いや失敗とともに見せてくれます。

5.可能性を信じて支える大人の大切さが伝わる

挑戦を続けるためには、本人の努力だけでなく、その人の可能性を信じる周囲の存在も必要です。

本人が自信を失っているときにも、その人の力を信じてくれる人がいる。失敗したときに正解を押しつけるのではなく、自分で立ち上がれるように支えてくれる人がいる。

その関わりによって、人は再び前を向けることがあります。

教育に関わる大人の役割も同じだと思います。

子どもを大人の思いどおりに動かすのではなく、その子の中にある可能性を見つけ、本人が自分の力で歩き始めるまで支えること。

その意味で『宇宙兄弟』は、子どもだけでなく、保護者や教育者にも読んでほしい作品です。

親子で『宇宙兄弟』を読むときに話したい3つのこと

作品を読み終えたあと、親子で次のようなことを話してみてはいかがでしょうか。

  • 自分だったら、失敗したあとにどうするか
  • 自分にはどんな得意があり、仲間にはどんな得意があるか
  • 今すぐ答えが出なくても、いつか挑戦してみたいことはあるか

作品から「正しい答え」を探す必要はありません。登場人物の選択について親子で考え、それぞれの感じ方を言葉にすること自体が、考える力を育てる時間になります。

完結は、新しい読者にとっての出発点

私は今、届いた全巻セットを読みながら、アニメで見た物語のさらに先へ進んでいます。まだ結末にはたどり着いていません。

読み終えたときに何を感じるのか。それも含めて、今はページをめくる時間を楽しんでいます。

作品の連載が完結しても、『宇宙兄弟』と新しく出会う人は、これからも増えていくはずです。

作品にとっての完結は、次の読者にとっての始まりでもあります。

ロボット教室の子どもたちにも、いつかこの作品を読んでほしい。

六太や日々人、多くの仲間たちの姿から、夢を持つことだけでなく、迷うこと、失敗すること、誰かを信じることの価値を感じてほしいと思います。

小山宙哉先生、長い連載を本当にありがとうございました。


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